ひとつ前の記事「数論の扉を開いた孤高の女性数学者、ソフィー・ジェルマン」をまとめながらふと思ったのですが、ソフィー・ジェルマンだけでなく、彼女の研究に影響を与えたルジャンドル、ポアンカレ問題で知られるポアンカレ、フェルマー、ガロア・・・フランスって偉大でかつ個性の強い数学者、多すぎませんか?もしかして私が知らない、すごい数学者がまだまだいるのじゃないか?・・・というわけで、今回はフランスの数学者をまとめてみました。
フランスは、数多くの優れた数学者を輩出しており、彼らの業績は数学の発展に大きな影響を与えました。この記事では活躍した時系列順に、代表的なフランスの数学者を簡単に紹介します。
彼らの詳しい功績や人となりを知りたい!という方には、記事の途中にあるリンクから、各数学者の記事ページに飛ぶことができますので、よろしかったら是非!
1. ピエール・ド・フェルマー (Pierre de Fermat, 1607–1665)
功績: フェルマーの最終定理やフェルマーの小定理など、数論の分野において重要な発見をしました。また、解析幾何学や確率論の発展にも貢献。
代表的な業績: フェルマーの最終定理。
2. ブレーズ・パスカル (Blaise Pascal, 1623–1662)
功績: 数学だけでなく、哲学や物理学にも多大な貢献をしました。確率論の基礎をピエール・ド・フェルマーと共に築き、数学的帰納法や円錐曲線の研究も行いました。
代表的な業績: パスカルの三角形、パスカルの定理。
3. ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ (Joseph-Louis Lagrange, 1736–1813)
功績: 力学や変分法、微分方程式に大きな貢献をしました。フランスで生まれましたが、主にイタリアとフランスで活躍し、ラグランジュの定理やラグランジュの方程式などで知られます。
代表的な業績: ラグランジュの定理、ラグランジュの多項式。
4. ガスパール・モンジュ (Gaspard Monge, 1746–1818)
功績: 解析幾何学の創始者の一人であり、特に図形の性質を研究する投影幾何学を発展させました。フランス革命期にも活躍し、教育制度改革にも尽力。
代表的な業績: 投影幾何学の基礎。
5. ジャン=バティスト・フーリエ (Jean-Baptiste Fourier, 1768–1830)
功績: フーリエ級数の理論を確立し、熱伝導の方程式を研究。フーリエ解析やフーリエ変換など、後世に大きな影響を与える発見をしました。
代表的な業績: フーリエ級数、フーリエ変換。
6. アドリアン=マリ・ルジャンドル (Adrien-Marie Legendre, 1752–1833)
功績:数論、解析学、統計学、天文学など、さまざまな分野で貢献した数学者。彼の業績には、ルジャンドル多項式やルジャンドルの記号(数論の分野で用いられる)があり、特に楕円関数論や数論の発展に大きく寄与しました。また、フェルマーの最終定理に関連する研究にも関わり、ソフィー・ジェルマンの数論研究にも影響を与えた人物でもあります。
代表的な業績: ルジャンドル多項式、ルジャンドルの記号。
7. ソフィー・ジェルマン (Sophie Germain, 1776–1831)
功績: 数論および弾性理論の分野に貢献しました。フェルマーの最終定理の一部のケースを証明し、弾性理論においても先駆的な業績を残しました。
代表的な業績: ジェルマンの定理、弾性理論。
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8. エヴァリスト・ガロア (Évariste Galois, 1811–1832)
功績: 代数方程式の解法に関するガロア理論を創設し、群論の基礎を築きました。ガロア理論は、現代代数学において非常に重要な役割を果たしています。
代表的な業績: ガロア理論、群論。
9. オーギュスタン=ルイ・コーシー (Augustin-Louis Cauchy, 1789–1857)
功績: 複素解析の基礎を築き、現代数学における多くの定理や理論を確立しました。コーシーの定理やコーシー列など、彼の名を冠する多くの数学的概念があります。
代表的な業績: コーシーの定理、コーシー列。
10. カミーユ・ジョルダン (Camille Jordan, 1838–1922)
功績: 代数と群論に多大な貢献をし、特に「ジョルダン標準形」で知られます。彼の研究は線形代数や代数的トポロジーにも影響を与えました。
代表的な業績: ジョルダン標準形、ジョルダンの補題。
11. アンリ・ポアンカレ (Henri Poincaré, 1854–1912)
功績: 数学、物理学、天文学など多くの分野で活躍しました。特に位相幾何学の創設者として、ポアンカレ予想は近代数学において最も重要な問題の一つでした。
代表的な業績: ポアンカレ予想、ポアンカレの双対定理。
番外. ルネ・デカルト(René Descartes, 1596–1650)
数学史において極めて重要な人物ですが、番外とした理由は、彼の業績が広範にわたり、哲学者としての活動も大きく、純粋に数学者としてのみ分類するのが難しいからです。しかし、もちろん数学におけるデカルトの影響は多大です。彼はフランスの偉大な数学者の一人であり、フェルマーと並んで17世紀フランスの数学の発展に貢献しています。
数学面における功績: 代数と幾何学を結び付けた「解析幾何学」を発展させました。特に、直線や曲線を数式で表すことで、幾何学的問題を代数的に解決する道を開きました。これが今日の「デカルト座標系」にも反映されており、物理学や工学の基礎を築いた重要な成果です。また、現代の数学記号の多くを標準化した人物の一人でもあります。特に、変数を , , で表し、定数を , , で表す方法を広めました。また、不等号の記号 , の使用を普及させたのも彼です。
代表的な業績: デカルト座標、解析幾何学の発展、数学記号の標準化。
番外2.
まとめ
フランスの数学者は、みなさん個性的なキャラクターが多いような印象があります。家族や社会からの向かい風を受けながら数学の研究をつづけたソフィー・ジェルマン、若くして決闘で命を散らしたガロア、本業は裁判官なのに趣味の数学で歴史に名を残したフェルマーなどなど。彼らの人生はドラマチックで、魅力的です。また、その生き方だけでなく肝心の数学という学問でも、数論・代数・解析・幾何学など多岐にわたる分野で画期的な業績を残しています。ピエール・ド・フェルマーからアンリ・ポアンカレまで、彼らの発見は数学の歴史を彩り、現代の数学にも影響を与え続けている・・・。やっぱり数学って面白いですね!