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そういえば具体的な内容を知らない・・・フェルマーの最終定理とは?

数学について興味がない人でも「フェルマー」や「フェルマーの最終定理」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?「フェルマーの料理」なんて漫画(およびドラマ)もありますよね。必殺技みたいで格好いいですよね、フェルマーの最終定理。これは、名前の通り「フェルマー」という人が提案した数学問題です。今回はそんなフェルマーの最終定理について、数学について詳しくない人でも理解しやすいよう、ご説明します!

 

フェルマーさんのイメージ

フェルマーの最終定理とは?

まず、フェルマーの最終定理を簡単に説明します。これは、整数 xx, yy, zzn>2n > 2 に対して、次の方程式を満たす解が存在しないという主張です:

 

xn+yn=zn

 

この形、どこかで見たことありませんか?nに2を入れると、ピタゴラスの定理三平方の定理)ですよね。つまり、n=2の時は、以下のパターンで整数解が存在します。

 

  • 32+42=523^2 + 4^2 = 5^2
    9+16=259 + 16 = 25
  • 52+122=1325^2 + 12^2 = 13^2
    25+144=16925 + 144 = 169
  • 82+152=1728^2 + 15^2 = 17^2
    64+225=28964 + 225 = 289

これらの条件を満たすx, y, z の組みあわせは「ピタゴラス数」と呼ばれています。つまりn=2の時は、たくさんの整数絵画存在しています。しかしn=3になるとフェルマーの最終定理が適用されます。つまり、x3+y3=z3 を満たす x, y, zの組み合わせは存在しないということです。

 

具体的に数字を入れてみると・・・

  • 13+23=331^3 + 2^3 = 3^31+8=27(成り立たない)1 + 8 = 27 \quad (\text{違う!})
  • 23+33=432^3 + 3^3 = 4^38+27=64(成り立たない
    )
    8 + 27 = 64 \quad (\text{違う!})

フェルマーの最終定理が提案されたのは1637年頃とされています。この定理は長い間証明されず、数学界に大きな課題を提供していました。

 

余白のメモのエピソード

この定理は、フェルマー古代ギリシャの数学者ディオファントスの著作『算術』を読んでいる際に、その余白にメモとして書き残したことがきっかけで知られるようになりました。

フェルマーが書いた有名なメモ

フェルマーは、この問題について次のようなメモを余白に書き残しました。

「私はこの命題の真に驚くべき証明を発見したが、それを余白に書き込むには余白が小さすぎる。」

このメモはラテン語で書かれており、翻訳すると「命題を証明するための美しい証明を発見したが、この余白ではそれを書くには狭すぎる」という意味です。このメモが非常に有名になり、長い間、数学者たちを魅了し続けました。

 

フェルマーのメモの影響

この「余白に証明を書けない」という言葉が、何世紀にもわたり数学界の謎として語り継がれてきました。フェルマー自身が発見したという「証明」が実際に存在したのか、あるいは彼が単に勘違いしていたのかは不明ですが、この余白のメモにより、彼の「最終定理」は何百年にもわたり数学界の最大の未解決問題として残ることとなります。

 

 

証明までの歴史

フェルマーの最終定理は、数学史における最も有名な未解決問題の一つであり、350年以上もの間、多くの数学者がその解決に挑んできました。最終的に1994年にアンドリュー・ワイルズが証明を完成させましたが、それまでに多くの数学者が重要な発展を遂げており、その貢献を時系列で紹介します。

1. ピエール・ド・フェルマー (Pierre de Fermat, 1607–1665)

  • 時代: 17世紀(1637年)
  • 功績: フェルマー自身が最終定理を命題として残しました。彼は、整数 xn+yn=znx^n + y^n = z^nn>2n > 2 の場合に整数解を持たないことを主張しましたが、具体的な証明を示さず、余白に「証明は余白には小さすぎて書けない」と書き残しました。
  • 影響: この未解決問題は後世の数学者にとって、数論における最も挑戦的な問題の一つとなります。

2. レオンハルト・オイラー (Leonhard Euler, 1707–1783)

3. ソフィー・ジェルマン (Sophie Germain, 1776–1831)

  • 時代: 19世紀初頭
  • 功績: ソフィー・ジェルマンは、フェルマーの最終定理に対して「ジェルマンの定理」を証明しました。彼女は、特定の素数 pp に対して、整数解が存在しないことを証明しました。特に、素数 pp に対して 2p+12p + 1素数である場合、フェルマーの最終定理が成り立つことを示しました。
  • 影響: ジェルマンの研究は、フェルマーの最終定理に対する部分的な証明を提供し、後の研究に重要な基盤を与えました。

4. エルンスト・クンマー (Ernst Kummer, 1810–1893)

5. リチャード・テイラー (Richard Taylor, 1962–)

6. アンドリュー・ワイルズ (Andrew Wiles, 1953–)

 

フェルマーの最終定理に取り組んだ日本人数学者

日本の数学者の中にも、フェルマーの最終定理に挑んだり、その証明に関連する研究に貢献した人物がいます。フェルマーの最終定理自体を直接証明した人はいませんが、関連する分野で重要な貢献をしています。特に、数論楕円曲線モジュラー形式の研究において世界的な評価を受けた日本の数学者が、間接的にフェルマーの最終定理の解決に貢献しています。

1. 志村五郎 (Goro Shimura, 1930–2019)

2. 岩澤健吉 (Kenkichi Iwasawa, 1917–1998)

  • 功績: 岩澤健吉は、岩澤理論という数論における重要な理論を構築しました。岩澤理論は、p進数に関する深い結果を扱い、特に数論的問題における階層構造を理解するための強力なツールです。彼の理論は、フェルマーの最終定理に対する研究においても間接的な貢献を果たしました。
  • 影響: 岩澤理論は、楕円曲線や数論的代数幾何学の研究に影響を与え、その分野の発展に寄与しました。彼の理論はフェルマーの最終定理そのものに直接関与したわけではありませんが、その研究に関連する重要な知見を提供しました。

3. 谷山豊(Yutaka Taniyama, 1927–1958)

 

フェルマーの最終定理の証明がもたらしたもの

フェルマーの最終定理の証明は、単に350年以上未解決だった数学の難問を解決することにとどまらず、その過程で多くの新しい数学的理論や概念が生まれ、数論や代数幾何学楕円曲線論、モジュラー形式などの分野に大きな影響を与えました。フェルマーの最終定理が証明される過程で生まれた主な副産物は以下の通りです。

  1. 楕円曲線論の発展:数論や暗号理論において重要な役割を果たす。
  2. モジュラー形式と数論の融合:数論と解析学を結びつける重要なツール。
  3. 代数的整数論の発展:岩澤理論は、代数体上の整数の構造に関する深い洞察を提供し、後の数論の発展に寄与。
  4. 数論と幾何学の統合:数論的な問題を幾何学的に扱う新たなアプローチが確立。
  5. 証明論や数学的手法の洗練:リフト技法、大規模共同作業の重要性の示唆
  6. 数学全体の人気向上:数学が難解であると同時に美しいものであることを示し、多くの若者が数学に興味を持つきっかけとなった。

 

まとめ

フェルマーの最終定理自体が現実の問題解決に直接使われることはありませんが、その証明に使われた理論や技術、数論の発展は、暗号技術やデータ分析など、現代社会における重要な技術に大きな影響を与えています。フェルマーの最終定理をめぐる研究は、純粋数学だけでなく、幅広い分野に応用できる新しい数学的手法を提供し、結果的に現実問題の解決にも貢献しているといえます。