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推しの研究「ガロア理論」をなんとか理解したい!(1)

前回記事でもお伝えしたのですが、ガロアは私にとって推し数学者の一人なのですが、その研究内容はあまりにも複雑というか抽象的過ぎて、まったく理解できていません。しかし推しの研究内容がわからないなんて、悲しすぎます。そこで今回は、なんとか推しの数学的発見「ガロア理論」を理解しようと試みる記事の第1回目です。

 

おつきあいいただけたら、幸いです!

 

ガロア理論のおさらい

ガロア理論は、数学における「対称性」と「構造」を扱うための強力な理論を提供し、代数方程式の解の構造を明らかにするという貢献をしました。この理論の発展によって、代数の世界が大きく広がり、数論、代数幾何学、暗号理論、物理学などの分野で不可欠な基礎を築いています。つまり、ガロア理論は現代数学の基礎を形作り、多くの数学的発見や技術の発展を支えるものとなっています。彼の理論を理解することで、数学の多くの領域において「なぜそうなるのか?」という本質的な問いに答えられるようになるといいます。

今回は、そんなガロア理論を理解できるよう、議論の対象を身近で具体的なアイテムに置き換えて考えてみます。

 

身近なものに置き換えたガロア理論

1. ガロア理論とは?

ガロア理論は、主に「方程式の解ける仕組み」を探る理論です。例えば、方程式を解くというのは、ある問題の答えを探すことです。通常方程式を解く場合、公式を使って地道に計算する必要があります。しかし、ガロアはこの答えの間に隠れたルール(対称性)を見つける方法を作りました。そのルールについて今回は解説します。

 

2. ジュースのレシピの例

イメージしやすいように、ガロアの理論を「ジュースのレシピ」に例えてみます。

  • あなたが「オレンジジュース」を作りたいとしましょう。オレンジ、砂糖、水を混ぜて作ります。レシピ通りに作ると、同じ味のジュースができるはずです。
  • でも、もしオレンジの量や砂糖の量を少し変えたら、味は変わりますよね?ガロアは、そうした「材料の変化(数の組み合わせ)」が、ジュースの「味(解)」にどのような影響を与えるかを研究していたのです。


3. ガロア理論の「対称性」をダンスに例える

ガロアが見つけた「対称性」を、ダンスの振り付けに例えてみます。

  • 例えば、A, B, C, D の4人のダンサーが円になって踊る振り付けを考えます。最初に1人目がA、2人目がB、3人目がC、4人目がD、という順で円を描いています。
  • この4人のポジションを入れ替える(つまり、AをBの場所に、BをCの場所に、CをDの場所に、DをAの場所に動かす)と、振り付けは変わりますが、円の形自体は同じですよね。これが「対称性」です。

ガロアは、こうした「位置の入れ替え」が、どれくらい自由にできるのか、そしてその入れ替えの組み合わせ方がどんなルールに従うのかを研究していました。

 

4. 方程式とガロア理論の関係

ガロア理論では、方程式の解(例えば、xの値)が「ダンサー」と考えられます。ダンサー(解)が踊る位置を入れ替えるときに、その入れ替え方(対称性)がどんな法則に従うかを調べることで、その方程式が解けるかどうかがわかるのです。

  • 例えば、2次方程式(x² + 2x + 1 = 0)の場合、解は2つあります。これをダンサー2人に置き換えると、2人の位置を入れ替える方法は「2つの入れ替え方」しかありません。
  • でも、5次方程式のように解が5つあると、入れ替え方が急激に増えて複雑になります。ガロアはこの複雑さを整理し、ある程度までならその入れ替え方を使って方程式を解く方法を見つけました。


5. ルービックキューブの例

ガロア理論の考え方をルービックキューブに例えることもできます。

  • ルービックキューブの色をそろえるのが「方程式を解く」ことだと考えてください。ガロア理論は、キューブの面をどう動かせば色がそろうのか、その「動き方のルール(対称性)」を研究しているようなものです。
  • キューブの面の回転には「規則」があり、その規則を理解すると、どの順番で面を回せば色がそろうかが見えてきます。ガロアは、数の世界でこの「動き方の規則」を発見しました。


6. ガロアの功績を整理すると

ガロアの理論は、「複雑なものをどれだけシンプルに理解できるか?」という問いに対する答えでした。例えば、方程式が複雑であっても、その中にある「隠れた規則性」を見つけることで、方程式の性質を理解できるようになります。

  • ガロア理論は、単に「解けるかどうか」を見つけるだけでなく、「どのようにして解けるか」を数学的に説明する道具を提供しました。
  • これにより、数学者たちは「なぜある方程式は解けるのに、他の方程式は解けないのか?」という疑問に対する答えを得ることができました。

 

ガロアは方程式を「ジュースのレシピ」や「ダンスの振り付け」「ルービックキューブの回し方」に例えられるように、複雑な数や解の動きを「入れ替え方(対称性)」として理解し、それをもとに方程式が解けるかどうかを調べる方法を見つけたのでした。

彼の発見は、まるで複雑なパズルの解き方を体系化したようなものです。ガロアの理論を使えば、どのようなパズルなら解けるのか、どのパズルが解けないのかがわかるようになるというわけです。