現代は、デジタルではコンピュータ、アナログではメジャーやコンパスや分度器など、計算や図形を簡単に描画できるツールがたくさんあります。古代の人たちはそれらのツールがない時代に、どうやって研究していたのでしょうか?
アルキメデスやピタゴラスのような大昔は、現代のような計算機やシミュレーションツールは当然ながら存在しませんでした。数学者たちは主に理論的な思考と手作業による計算に頼っていたようです。彼らが問題解決や真理に到達するために用いた方法には、次のようなものがあります。
1. 幾何学的な推論
- 古代ギリシャの数学者たちは、幾何学を通じて数学的真理に迫ることが得意でした。ユークリッドの『原論(Elements)』に代表されるように、彼らは公理(明らかに正しいとされる基本的な前提)から出発し、論理的な推論を重ねて定理を導き出していきました。これにより、彼らは図形や空間の性質について厳密に論証していったようです。
2. 図形の描画と操作
- ピタゴラスは直角三角形の各辺を使って正方形を描き、その面積の関係から定理を導いています。このように、ピタゴラスは図形の面積や形状を視覚的に観察することで、数的な関係を見つけていたようです。
- アルキメデスはより高度な幾何学的推論を行っており、彼は特に円や球、円柱などの曲線を扱う方法を発展させています。彼は円に内接する多角形を使い、多角形の辺の数を増やしていくことで、円の面積に限りなく近づく手法を考案しました。このアプローチは、いわゆる「極限」の概念にも繋がっています。
- アポロニウス(円錐曲線の研究)の場合は、図形を描くことでその性質を視覚的に理解し、それをもとに幾何学的な操作や推論を行いました。例えば、円錐を様々な角度で切断して得られる楕円、双曲線、放物線などの曲線を観察し、それぞれの曲線の特性を導き出しました。これは、今日でいう「幾何学的構成法」に相当するもので、視覚的な直感と論理的な推論を組み合わせる手法です。
3. 公理体系の利用
4. 他の数学者との交流と批判的検証
- 古代ギリシャやエジプトでは、学問的中心地で他の数学者や学者と交流を持つことで、その知識を広げたようです。アルキメデスやエウクレイデス(ユークリッド)など、先行する数学者の業績を学び、これらを基にすることで自身の理論を発展できます。また、他の学者からの批判的なフィードバックや議論を通じて、考え方を精錬していくプロセスもありました。
5. 観察と実験的手法
- 古代ギリシャの数学者たちは、幾何学的な図形を観察するだけでなく、場合によっては物理的な操作や実験を行うこともありました。例えば、円錐曲線の研究では、実際に円錐を切断したり、図形を描いたりすることで、理論を確認することが行われました。これにより、彼らは数学的な法則がどのように現実世界に当てはまるかを検証しました。
古代の数学者たちは、限られたツールや技術の中で、理論的思考、幾何学的な推論、他の数学者との交流、そして具体的な問題を抽象化する手法を駆使して、複雑な数学的問題に取り組んでいたようです。彼らの業績は、現代の数学の基礎を築き上げるものであり、その知的な努力は、今日でも高く評価されています。
現代は、計算するのに便利な物理的なツールや公理・定理などの定義が取り揃っているので、解決したい問題に合わせて最適な手段を選択したり、組み合わせたりして答えを導き出せます。ですがその裏には、古代から現代に続く長い道のりの中で、先人たちが見つけ出した真理と、その真理を使いやすくまとめ現代まで継承してきた歴史があるわけですね。
私が数学が苦手な理由は「何の役に立つのかわからない」無味乾燥な知識に思えたからです。四則演算よりも高度な数学(図形の面積を求める関数や微分積分など)になってくると、単なる記号的な情報にしか思えず、試験のために覚える、という苦痛が先に立ってしまいました。しかし、数学の各分野がなぜ研究されたのか、どのように活用されたのかといった背景や、教科書に掲載されている数式に至るまでにどのような紆余曲折や思考プロセスを踏んだのかというエピソードがあると、親近感がわいてきました。
そして、教科書に載っている数式は、過去の賢人たちが導き出した一番おいしい部分だけを詰め合わせたものなんだなぁと認識が変わりました。あまりにもそっけなさ過ぎて、無味乾燥な知識に見えるけど、本当はとっても手間暇かけて作り上げたありがたいものなんだなぁと。
もちろん数学をパズルのような感覚で最初から「面白い!」と思える方は最高です。ですが私と同じように「こんなの覚えたとて、社会に出てから何の役に立つの?」と考えて敬遠してしまった方、かつ、何らかの理由で克服したいと考えている方がいらっしゃって、このブログが少しでも数学に対して親しみを持つきっかけになれたら幸いです!