数学の研究分野って、たくさんありますよね。三角関数や円グラフ、二次方程式や行列…学生時代にいろいろなテーマの勉強をしましたが、縦のつながりや横のつながりがつかみにくく、何のために勉強しているのか、これを覚えれば何に役立つのかがわからなかったものです。
そこで今回は数学の分野を大まかに分けてみました。各分野がどのようなことを研究しているのか把握できれば、数学界を俯瞰できます。「なるほどー、こういう研究が数学の一部を形成しているんだ」とわかれば、数学に対する理解が少し深まるはず…!
なるべくわかりやすいように説明しておりますが、私も数学は素人レベル…。「どういうこと?」という部分があればコメントいただけたら幸いです。それでは早速、8つの数学の研究分野を見てみましょう!
1. 数の研究(数論)
- 数についての研究をする分野です。例えば、私たちが普段使っている「1、2、3、4、…」という数や、偶数や奇数、素数(1と自分自身以外で割り切れない数)について学びます。
- 研究開始の年代: 数論は古代から存在します。特に、古代バビロニア(紀元前1800年頃)や古代ギリシャでの研究が知られています。
- 研究のきっかけ: 人々は数を使って日常生活を営む中で、数の性質やパターンに興味を持つようになり、特に「素数」や「完全数」などが早期に研究されました。
- 代表的な学者:
2. 形の研究(幾何学)
- 形や大きさ、図形について研究する分野です。三角形や四角形、円といった図形の性質を調べたり、図形の面積や角度を計算したりします。
- 研究開始の年代: 幾何学は、古代エジプトやメソポタミアで紀元前3000年頃から存在していましたが、体系的に研究され始めたのは古代ギリシャ(紀元前500年頃)です。
- 研究のきっかけ: 土地の測量や建築、天文学などで実用的に必要とされ、これが幾何学の発展を促しました。
- 代表的な学者:
3. 量の研究(代数学)
- 数や文字を使って、式や方程式を解く方法を研究する分野です。例えば、「x + 3 = 7」という式で、xが何なのかを探したりします。
- 研究開始の年代: 代数学の始まりは古代メソポタミア(紀元前1800年頃)に遡り、バビロニア人が一次方程式や二次方程式を解いていました。現代の代数学の基礎が確立されたのは、イスラム世界と中世ヨーロッパ(9-13世紀)です。
- 研究のきっかけ: 実用的な問題、特に商取引や財産分与、天文学的計算が代数学の発展を促しました。
- 代表的な学者:
4. 変わり方の研究(解析学)
- ものがどう変わるかを調べる分野です。例えば、物が動く速さや、物が大きくなるスピードを調べたりします。微分や積分という技術を使って、物事の変わり方を詳しく調べます。
- 研究開始の年代: 解析学の起源は古代ギリシャのアルキメデス(紀元前3世紀頃)にありますが、17世紀にニュートンとライプニッツによって微積分学として体系化されました。
- 研究のきっかけ: 物体の運動や変化を数理的に理解する必要性が解析学の発展を促しました。
- 代表的な学者:
- アルキメデス(紀元前287-212年頃): 極限の概念を先取りした研究を行いました。
- アイザック・ニュートン(1643-1727): 微分積分学を創始し、運動の法則を数理的に記述しました。
- ゴットフリート・ライプニッツ(1646-1716): ニュートンとは独立に微分積分学を発展させました。
5. パターンの研究(組み合わせ数学)
- どうやって物を組み合わせたり並べたりするかを調べる分野です。たとえば、違う色の玉をいくつか並べるとき、何通りの並べ方があるかを考えます。
- 研究開始の年代: 組み合わせ数学の初期の研究は、古代インドやイスラム世界(紀元前4世紀頃)で行われていましたが、18世紀のヨーロッパで体系化されました。
- 研究のきっかけ: ギャンブルやゲームの理論、統計学的な問題が組み合わせ数学の発展を促しました。
- 代表的な学者:
6. データの研究(確率・統計)
- たくさんのデータや情報を調べて、どんなパターンがあるのかを見つける分野です。何かが起こる確率を調べたり、アンケートの結果をまとめたりします。
- 研究開始の年代: 確率論と統計学の基礎は17世紀にヨーロッパで形成されましたが、統計の概念自体は古代中国やエジプトで使用されていました。
- 研究のきっかけ: ギャンブルの分析や、人口統計、疫学などの実用的なニーズがこの分野の発展を促しました。
- 代表的な学者:
7. 計算の研究(数値解析)
- 数値解析は、複雑な計算を効率的に行う方法を研究する分野です。コンピューターを使って、実際に計算を行い、その結果を分析することも含まれます。
- 研究開始の年代: 数値解析の始まりは、古代バビロニアやエジプトでの近似的な計算にまで遡りますが、現代の数値解析は20世紀にコンピュータの発展とともに大きく進展しました。
- 研究のきっかけ: 複雑な方程式を解く必要性や、工学や物理学におけるシミュレーションの要求がこの分野の発展を促しました。
- 代表的な学者:
- アイザック・ニュートン(1643-1727): 数値解析の初期の方法として「ニュートン法」を提案しました。
- ジョン・フォン・ノイマン(1903-1957): コンピュータの父であり、数値解析の発展に貢献しました。
- カール・フリードリッヒ・ガウス(1777-1855): 最小二乗法など、数値解析の基本的な技法を開発しました。
8. 数学の応用分野
- 数学を使って現実の世界の問題を解決するための分野です。たとえば、建物を作るときにどれくらいの材料が必要かを計算したり、医療のデータを使って新しい薬を作ったりします。
- 研究開始の年代: 応用数学は古代から存在しますが、特に18世紀から20世紀にかけて急速に発展しました。
- 研究のきっかけ: 工学、物理学、経済学、社会科学などの実際の問題を解決するために数学を応用する必要性が高まりました。
- 代表的な学者:
- レオンハルト・オイラー(1707-1783): 工学や物理学への数学の応用に大きく貢献しました。
- ジョゼフ・フーリエ(1768-1830): フーリエ解析を開発し、熱伝導や振動解析に応用しました。
- アラン・チューリング(1912-1954): 計算理論を確立し、コンピュータ科学の基礎を築きました。
これらの分野は、時間とともに互いに影響し合いながら発展し、現代の数学の複雑で多様な領域を形作っています。それぞれの分野は、特定の問題を解決するために必要に応じて生まれ、偉大な学者たちの努力によって進化してきました。
この8つの分野のいずれにも属さない研究もあります。例えばヒルベルトやゲーデルの研究や圏論などは「メタ数学」とも呼ばれ、数学そのものを対象とする研究分野です。先述した8つの分野をひとつにまとめて俯瞰し、数学の基礎、構造、形式体系について取り扱うものです。集合論、モデル理論、証明論などもメタ数学の領域にあります。
この先、地球を取り巻く環境の変化や人類の宇宙進出の実現、新しい種類の問題が出現した時、数学の分野はすそ野を伸ばしていくのだと思います。それは楽しみでもあり、怖くもあり…。しかしどれだけ時が過ぎても、確立された知は不変のまま未来へ継承されていく…そんな壮大さが、数学の魅力ですね!