先日の投稿で「代数学の父」といえばディオファントス、と紹介しましたが、実は代数学には他にも父と呼ばれる存在がいます。それがフワーリズミーです。強くてゴツそうな名前のディオファントスと比べて、こちらはフワッとしたカワイイ系のお名前ですよね。ゆるふわ系リズミカル女子…ではなくれっきとした男性の数学者です。今回はこのフワーリズミーさんをご紹介します。
概要
フワーリズミー(アル=フワーリズミー、Al-Khwarizmi)は、9世紀に活躍したペルシャ出身の数学者、天文学者、地理学者であり、彼の業績は現代の数学に非常に大きな影響を与えました。彼のフルネームはムハンマド・イブン・ムーサー・アル=フワーリズミー(Muhammad ibn Musa al-Khwarizmi)で、「アル=フワーリズミー」は彼の故郷であるホラズム(現在のウズベキスタンの一部)に由来しています。
人となりと背景
- フワーリズミーは、現在のウズベキスタンにあたるホラズム地方で生まれ、9世紀にアッバース朝の首都バグダードで活動しました。
- 彼は、当時のバグダードに設置されていた「知恵の館(バイト・アル=ヒクマ)」で働いていました。これは、ギリシャ語やサンスクリット語の文献をアラビア語に翻訳し、学術的な研究を行うための大きな図書館兼学問所でした。ここで、彼はギリシャやインドの数学、天文学、地理学の知識を学び、独自の研究を行いました。
フワーリズミーの数学的業績
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代数学の父 フワーリズミーは、現代における「代数学の父」と称されています。彼の著書『アル=ジャブル・ワル=ムカーバラ(Al-Kitab al-Mukhtasar fi Hisab al-Jabr wal-Muqabala)』は、代数学の発展において最も重要な影響を与えた書物の一つです。この本の中で彼は、一次方程式や二次方程式の解法を詳しく説明しています。この本のタイトルの一部「アル=ジャブル」が、英語の「アルジェブラ(algebra)」の語源となりました。
- アル=ジャブル:これは「復元」という意味で、欠けた項を等式に戻す操作を指します。
- ムカーバラ:これは「比較」を意味し、等式の両辺を比較して簡略化する操作を指します。
この著書では、フワーリズミーは文字を使わず、代わりに言葉を使って方程式の操作を説明していましたが、それでも数式的なアプローチを示しており、これが代数学の基礎となりました。
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「アルゴリズム」という概念の起源 フワーリズミーの名前「アル=フワーリズミー」が、西洋の数学においてアルゴリズム(algorithm)という言葉の語源となりました。彼は、インド数字や0の概念を用いた計算法をアラビア語圏にもたらし、これがヨーロッパに伝わることで、アルゴリズムとして知られる計算手法が発展しました。
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インドの数字体系とアラビア数字の普及 フワーリズミーは、インドから伝わったインド数字体系をアラビア語圏に紹介し、これが後にアラビア数字としてヨーロッパに広まりました。彼の著書『算術の書(Kitab al-Hisab al-Hindi)』は、この数字体系を紹介し、計算手法や数の概念を明確にしました。この体系は、後に中世ヨーロッパで受け入れられ、現在でも使われている10進数の数字表記となりました。
フワーリズミーはこんな人
- ペルシャ出身の数学者
- 代数学の父
- 代数学の基礎を築いた
- 「算術の書」を著した
- 名前がアルゴリズムの語源となった
- 計算手順の発展に大きく寄与した
- インド数学体系をアラビア語圏に導入
- ヨーロッパを通じて世界中にインド数学体系を広げた
- 天文学や地理学でも業績を残した
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