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最古の数学者、ターレス

ターレスをご存知ですか?現存する記録の中で、世界最古と言われている数学者です。一般的には哲学者として知られていますが、幾何学の定理の発見や、数学的証明をおこなった人物として数学者の一面も持っています。

ターレス(Thales of Miletus)は、紀元前624年頃から紀元前546年頃にかけて活躍した古代ギリシャの哲学者で、しばしば「最古の数学者」や「西洋哲学の父」とも称されます。彼は、現在のトルコにあるミレトス(Miletus)という都市で生まれました。今回はそんなターレスについて紹介します。

 

ターレスの概要

1. 数学と幾何学の功績

  • 幾何学の定理: ターレスは、幾何学においていくつかの基本的な定理を発見したと伝えられています。彼に帰される定理の一つには「ターレスの定理」があります。これは、半円の直径を底辺とする三角形の内角が常に直角であることを示しています。
  • 証明の導入: ターレスは、数学的定理を「証明する」という概念を導入した最初の人物とされています。それまでの時代には、数学的な事実は経験的に受け入れられていましたが、ターレスはそれを論理的に証明しようとしました。

2. 自然哲学と科学

  • 自然の探求: ターレスは、自然界を理解するために神話的な説明から離れ、論理的・合理的な考え方を導入しました。彼は、水がすべての万物の根源であると考え、「すべてのものは水から生じる」という思想を提唱しました。これは、物質の根源を探る哲学的な探究の始まりとされています。
  • 天文学と測量: ターレスはまた、天文学や測量にも貢献しました。彼は、ピラミッドの高さをその影の長さを用いて測定したと伝えられています。また、日食を予測したという記録も残っています。

ターレスの重要性

ターレスは、神話的な解釈に頼らず、自然や宇宙を合理的に理解しようとする姿勢を初めて示した人物とされています。彼の業績は、後の科学と数学の基礎を築き、彼が提唱した理論や方法論は、数千年後の科学革命へとつながる道を開きました。そのため、彼は「西洋哲学の父」として尊敬され続けています。

ターレスの功績は、単なる数学や哲学にとどまらず、人類の知的探求の礎を築いたことにあります。

 

ターレスにまつわるエピソード

1. ピラミッドの高さを測るエピソード

ターレスがエジプトを訪れた際、ギザのピラミッドの高さを正確に測定したとされています。当時、ピラミッドのような巨大な建造物の高さを測るのは非常に困難でしたが、ターレスは独自の発想でこれを解決しました。

彼は、ピラミッドの影と自分の影の長さを利用しました。具体的には、自分の影の長さが自分の身長と同じになる時間帯を待ち、その時にピラミッドの影の長さを測定するという方法を用いました。そして、影の長さとピラミッドの高さが同じ比率になることを利用して、ピラミッドの高さを計算したのです。この発想は、彼が幾何学を実生活に応用する能力があればこそですね。

 

2. 日食を予測したエピソード

ターレスは、紀元前585年5月28日に起こった日食を予測したとされています。これは、歴史上初めて日食が予測された例とされています。この日食は、リディアとメディアの間で行われた戦争の最中に起こり、その不吉さから戦争は中断され、和平が結ばれたと言われています。

ターレスがどのようにして日食を予測したかについては詳しい記録が残っていませんが、天文学と数学の知識を駆使して、月と太陽の運行から予測したと考えられています。この予測は、ターレスの科学的な探求心と、自然現象を論理的に理解しようとする姿勢をよく示しています。

3. オリーブ油の投機エピソード

ターレスは、哲学者としての活動だけでなく、実業家としても成功したとされるエピソードがあります。彼が天体の動きを観察してオリーブの豊作を予測したことがありました。この予測に基づき、彼は事前にオリーブ搾油機の使用権を安く買い占めました。そして、実際にオリーブの大豊作が起こると、多くの農民がオリーブ油を搾るために搾油機を必要としたため、ターレスはその使用権を高値で貸し出して大きな利益を得ました。

このエピソードは、ターレスが単に学問に没頭するだけでなく、実際のビジネスの世界でも成功を収める能力を持っていたことを示しています。また、これは彼が哲学者でありながら、現実的な問題に対しても天才的な解決策を見つけることができたことを表しています。

4. 井戸に落ちるエピソード

ターレスの人柄をよく表しているエピソードとして、次の話があります。彼は夜、星空を見上げながら歩いていると、井戸に落ちてしまいました。すると、近くにいたトラキアの召使いの女性が「天を観察するのに夢中で、足元のことすら見えない」と笑ったと言われています。この話は、ターレスがいかに深く考え事をしていたか、そしてそれが彼の学問への没頭ぶりを示しているエピソードとして伝えられています。好きなものに没頭するあまり、周囲のコトがまったく気にならなくなるとは…すごい集中力ですね。

 

ターレスに関するこれらのエピソードは、彼の天才的な発想や哲学的な探究心、そして現実世界への応用力をよく表しています。彼は、抽象的な思索だけでなく、実際の問題を解決する能力を持ち合わせており、また、学問に対する深い情熱が彼の独特な人柄を形作っていました。

 

親交があった可能性のある同世代の数学者・哲学者

  1. ソロン (Solon)

    • ターレスとソロンは同時代に生きたギリシャの知識人で、いくつかの伝承によれば親交があったと言われています。ソロンはアテネの政治家で、ターレスとは異なる分野で活動していましたが、互いに哲学的な対話を交わした可能性があります。彼らは共に「七賢人」と呼ばれる、古代ギリシャの知恵者たちの一員です。
  2. ピタゴラス (Pythagoras)

 

ピタゴラスが数学をはじめるきっかけとなったのがターレスなら、文字通り「最古の数学者」「すべての数学の父」といっても過言ではないですね!

 

ターレスってこんな人
古代ギリシャの賢い人
古代ギリシャの哲学者
・数学的証明の先駆者
・夢中になると周りが見えないほど集中する
ピタゴラスに数学をすすめた立役者
・客観的事実に基づく測定や予測が得意

 

キーワード
・ピラミッド
・数学的証明
ターレスの定理

 

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