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数学の礎、ユークリッド

ユークリッドをご存知ですか?はるか昔の時代の数学者です。幾何学と数論の基礎を築いた書物「原論」の著書として有名で、幾何学の父という異名を持っています。

原論のボリュームが大きすぎて「ユークリッドは複数名のペンネームなのでは?」という説もある謎の多き人物。今回はそんなユークリッドについて紹介します。

ユークリッドのイメージ

ユークリッド(紀元前約280年頃)は、古代ギリシャの数学者です。ユークリッドは英語での名前で、ギリシャ語ではエウクレイデス(Euclides)というようです。彼の生い立ちに関する詳細な情報はほとんど残されていません。ただし、彼はアレクサンドリアで活躍したとされており、アレクサンドリア図書館で教育者として活動していたとも言われています。ユークリッドは、おそらくプラトンの学派に属していたと考えられていますが、その具体的な教育背景や師弟関係についての確証はありません。

 

数学者としての功績

ユークリッドの最大の功績は幾何学の父」と称されるほどの影響を与えた著作『原論(エレメンツ)』を書きあげ、世に出したことです。幾何とは円や三角や四角などの図形のことで、幾何学は図形の性質を研究する学問です。この著作は、数学史上最も影響力のある書物の一つです。

『原論』の概要

『原論』は、13巻からなる数学の教科書で、主に平面幾何学や数論を扱っています。ユークリッドは、既知の数学知識を一つの体系にまとめ、論理的に証明された定理や命題を順序立てて解説しました。このアプローチは、数学を厳密に論理的な体系として構築するモデルとなり、約2000年にわたって数学教育の標準として使用されました。

主な研究内容

  • 平面幾何学: ユークリッドは、基本的な定義や公理から始め、平行線の性質、三角形の合同条件、円周角の定理などを証明しました。
  • 数論: 自然数の性質についての研究も行い、例えば、素数が無限に存在することや、最大公約数を求めるユークリッドの互除法などが『原論』に記されています。

影響と遺産

ユークリッドの『原論』は、科学や工学、さらには哲学にまで影響を与え、近代科学の発展においても重要な役割を果たしました。この書物は、19世紀に至るまで西洋の教育システムの中心的な教材となり、今日でも数学の基礎的な学問分野として引用されています。

ユークリッド幾何学は、その後の非ユークリッド幾何学の発展にもつながり、彼の方法論と論理的アプローチは、現代数学の基盤を形成する重要な要素として位置づけられています。

 

数学に王道なし

ユークリッドアレクサンドリアで数学を教えていた頃、プトレマイオス1世(エジプトの王であり、アレクサンドリア図書館の創設者でもあります)が彼に尋ねました。

「数学を学ぶ上で、もっと短く簡単な道はないのか?」

これに対して、ユークリッドはこう答えました。

数学には王道はありません(There is no royal road to geometry.)」

この言葉は、数学を学ぶためには時間と努力が必要であり、近道や簡単な方法は存在しないことを示しています。ユークリッドは、数学の学びは全員にとって同じプロセスを経なければならないものであり、厳密な論理の積み重ねを尊重する姿勢を強調したそうです。

「数学には王道はありません」のイメージ

この言葉は、数学の学びに対するユークリッドの厳格な態度と、教育者としての信念が表れており、彼の名声を後世に伝えるものとなっています。また、この言葉は、数学だけでなく、広く学問や努力の大切さを示す格言としても引用されることが多いです。

 

「○○に王道なし」という言い回しは今でも耳にすることがありますが、元ネタはユークリッドだと知りませんでした。亜種として「○○に近道なし」もありますよね。とても感慨深いです。しかし王様に対してこのような正論を言い放つとは、豪胆ですね。プトレマイオス1世ユークリッドはそれほど親しい間柄だったということかもしれません。

 

ユークリッドが影響を与えた人物

ユークリッドが影響を与えた人物は枚挙にいとまがありません。数学を学んだ人であれば誰もがユークリッドの築いた礎の上に立っていることになります。ここではユークリッドと生きた年代の近い、同じ数学の徒を3名紹介します。

 

  1. アルキメデス: アルキメデスユークリッドと同時代の数学者で、ユークリッドの『原論』を参考にしつつ、自身の研究を進めています。特に幾何学において、ユークリッドの方法論を応用したと言われています。

  2. ヒパティア: ヒパティアは、アレクサンドリアで活動した女性数学者で、ユークリッドの『原論』の研究・解説を行ったことでも知られています。彼女はユークリッドの影響を受けた一人です。

  3. ウマル・ハイヤー: 11世紀のペルシアの詩人であり数学者であるウマル・ハイヤーム(オマル・ハイヤームと表記されることもあります)も、ユークリッドの『原論』に影響を受け、幾何学の研究を行っています。彼はユークリッドの第5公準(平行線の公理)について研究し、後の非ユークリッド幾何学に繋がる道を開きました。

 

ユークリッドの名前がつく数学用語

ユークリッド空間 (Euclidean Space)

ユークリッド空間は「私たちが住む世界の空間のこと」を数学的に示したものです。

  • 1次元は、まっすぐな「線」です。線の上に点が1つあれば、その点の位置は1つの数字(例えば、0とか5とか)で表せます。

  • 2次元は、「平面」です。紙の上に点があったら、その位置を示すために2つの数字(横の位置と縦の位置)が必要です。

  • 3次元は、立体の世界です。私たちが普段生活している空間のことで、この空間では、横の位置、縦の位置、そして高さの3つの数字で点の位置を示すことができます。

 

ユークリッド距離

ユークリッド距離は、2つの点の間の「まっすぐな距離」のことです。

たとえば、地図の上で2つの場所を結んでいる「直線」の距離を測るようなイメージです。

  • たとえば、あなたが1つの公園の端から端まで歩くとき、一番近道でまっすぐに歩いたときの距離がユークリッド距離です。

2次元(平面)の場合、この距離は、「ピタゴラスの定理」というやり方で計算できます。2点の間の横の距離と縦の距離を使って計算します。

 

ユークリッドの互除法

ユークリッドの互除法は、2つの数字の「最大公約数」を見つけるための方法です。

最大公約数っていうのは、2つの数字を両方とも割り切れる「一番大きい数」のことです。たとえば、6と9の最大公約数は3です。なぜなら、6も9も3で割ることができるからです。

ユークリッドの互除法をとても簡単に説明すると:

  1. まず、大きい数字から小さい数字を引いて、その結果を計算します。
  2. その次に、その結果を使って同じことを繰り返します(また引き算)。
  3. 最終的に「割り切れる」まで繰り返します。そのときの数字が最大公約数です。

 

ユークリッドってこんな人
古代ギリシャ
・王様に「数学には王道はない」と言った
・膨大なボリュームの書籍をわかりやすく書きあげる根性がありかつ頭のいい人

キーワード
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ユークリッドの互除法
幾何学の父
・原論

 

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