推し(ガロア)の研究(ガロア理論)を何とか理解したい、という気持ちのもと誕生した記事の3回目です。前回は実際に数字を使って、ガロア理論をなぞってみました。今回はガロア理論で使われる用語についてまとめました。
お付き合いいただけたら幸いです!
ガロア理論で使われる主な用語
ガロア理論で使われる独特の用語をいくつか紹介します。それぞれの用語は、ガロア理論の中で重要な役割を持ち、代数方程式の解の性質を理解するために使われます。以下の用語をわかりやすく解説していきます。
1. 群(Group)
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定義: 群は、ある集合とその集合上で定義された演算(例えば「足し算」や「掛け算」など)を持つ数学的な構造です。この演算は、群の要素同士を組み合わせる操作を表します。
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性質:
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例: 整数の加法(足し算)や、回転操作を持つ図形の対称性など。
2. ガロア群(Galois Group)
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定義: ガロア群は、特定の方程式の解が属する体の「対称性」を表す群です。具体的には、方程式の解を入れ替える変換のうち、方程式の形を変えない変換全体の集合として定義されます。
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役割: 代数方程式が解けるかどうかをガロア群の構造を通じて分析するのに使います。方程式の解の間の対称性を明確にするためのツールです。
3. 可解群(Solvable Group)
- 定義: 可解群とは、群を段階的に小さな部分群に分解していったとき、そのすべての部分群が「アーベル群(交換法則が成り立つ群)」になるような群のことです。
- 役割: ガロア理論では、ガロア群が可解群であるかどうかを調べることで、方程式が代数的に解けるかどうかを判定します。
- 例: 3次方程式や4次方程式のガロア群は可解群ですが、5次方程式の一般的なガロア群は可解群ではないため、代数的には解けないことが示されています。
4. アーベル群(Abelian Group)
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定義: アーベル群は、群の演算が可換である群です。つまり、任意の要素 , に対して、 が成り立つ群です。
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イメージ:
- アーベル群は、要素の順番を気にしなくても演算結果が変わらない群です。
- 整数の加法を考えたとき、が成り立つので、はアーベル群です。
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例:
- 有理数の集合 に対する加法、実数の集合 に対する加法などはアーベル群です。
- (整数を で割った余りの集合)は加法に関してアーベル群です。
5. 体(Field)
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定義: 体とは、加法と乗法という2つの演算が定義されていて、それぞれの逆演算(引き算、割り算)が可能な集合です。簡単に言うと、分数の計算が自由にできる数の集まりです。
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例: 有理数(分数全体の集合)、実数、複素数などが体の例です。これらは、加法と乗法について閉じており、逆数も存在します。
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ガロア理論での役割: ガロア理論では、方程式の解が含まれる体の性質を解析します。たとえば、ある方程式の解を含む最小の体を考えることで、解の構造を理解するのに役立ちます。
6. 対称性(Symmetry)
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定義: ガロア理論における対称性とは、方程式の解が入れ替わっても方程式の形自体は変わらない性質を指します。この対称性を調べることで、方程式の解の性質を理解することができます。
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役割: ガロア理論では、方程式の解を入れ替えたり変換したときに、どのような対称性が保たれるかをガロア群を通じて調べます。
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例: という方程式の解 と を入れ替える操作は対称性の一例です。
7. 拡大体(Field Extension)
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定義: 拡大体とは、ある体をさらに大きな体に広げたものを指します。たとえば、有理数体(分数の集合)に新たな数(など)を追加して得られる集合が拡大体です。
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役割: ガロア理論では、方程式の解を含む最小の拡大体を調べ、それに対応するガロア群を分析することで、方程式の解の性質を理解します。
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例: 有理数体 に を加えた拡大体 などがあります。これは、を含む数の集まりです。
8. 自己同型(Automorphism)
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定義: 体の構造を保ちながら、体の要素を他の要素に変換する写像(変換のルール)を指します。ガロア群は、これらの自己同型を集めたものです。
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役割: 方程式の解の集合に対する対称性を表現するのに使われます。自己同型が多いほど、その方程式のガロア群は複雑になります。
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例: に対して、 を に変換する自己同型があります。この変換は体の加法や乗法の構造を保つため、ガロア群の一部を構成します。
ガロア理論以外でも使われる数学的用語
1. 写像 (mapping)
- 写像とは、ある集合から別の集合へ要素を対応させるルールや関数のことです。数学では通常、のように表記します。
- 例えば、集合 の各要素に対して、集合 の要素を1つ対応させる場合、これを写像と言います。関数も写像の一種です。
- 写像の性質には、全射(全ての の要素が少なくとも1つの の要素と対応する)、単射(異なる の要素が異なる の要素と対応する)などがあります。
2. 下中心列 (lower central series)
- 下中心列は、ある群の中心性を段階的に調べるための列(階層構造)です。
- 具体的には、群 の下中心列 は、次のように定義されます:
- (ここで、は、 と の元の交換子で生成される部分群)
- というように、次々と交換子で部分群を作っていきます。
- 交換子は、群の元 と に対して という形で定義されます。
- 下中心列は、群の構造をより詳細に調べ、特に可解性や nilpotent 群の特性を理解するのに役立ちます。
3. 商群 (quotient group)
- 商群は、ある群 をその部分群 で割る(商を取る)ことによって得られる新しい群です。部分群 は通常、正規部分群である必要があります。
- 商群は のように書き、要素は の「余類」からなります。余類とは、 の元を固定して の他の要素を操作することで得られる集合です。
- 例えば、 の要素 を用いて と表します。これが商群の要素になります。
- 商群の直感的なイメージは、「正規部分群 による構造を除外した結果」として、新しい群の構造を見ることです。
4. 正規部分群 (normal subgroup)
- 正規部分群は、群 の部分群 で、任意の の元 に対して、 が成り立つものです。つまり、部分群 の元を群全体の元で「包む」と、その結果が同じになるような性質を持つ部分群です。
- 正規部分群は、商群を定義するために重要です。例えば、商群 を構築するためには、 が正規部分群である必要があります。
- 正規部分群の直感的なイメージは、「部分群が群の中で均等に広がっている」ような状況です。
5. 導出列 (derived series)
- 導出列は、群の可解性を調べるための列で、群の「交換子部分群」を次々と取りながら列を作ります。
- 具体的には、群 に対して導出列 は以下のように定義されます:
- ( の交換子部分群:元同士の交換子で生成される部分群)
- と続いていきます。
- この列が最終的に単位元(群の中の「0」に相当するもの)に到達する場合、群は可解群と呼ばれます。可解群であることは、ガロア理論において、代数的に解が求められる条件に関連しています。
まとめ
これらの用語は、ガロア理論において重要な役割を果たし、方程式の解をどのように扱うかを理解するための基礎です。それぞれが方程式の解の構造や対称性を捉えるための「ツール」として働いています。
- 群とガロア群は、方程式の解の対称性を解析するための基礎。
- 体と拡大体は、方程式の解が含まれる数の範囲を扱います。
- 可解群は、方程式が代数的に解けるかどうかを判断する基準となります。