先日、動画配信サービスで「奇蹟がくれた数式」を視聴しました。インドの天才・カリスマ・スーパー数学者ラマヌジャンを主役にした物語です。過去にも一度視聴したのですが、ラマヌジャンをとりまく苦境があまりにも辛すぎて、見ていて悲しかったことを覚えています。インド映画というと昨年日本でも大人気だったRRR(劇場に7回見に行きました!)の、生命力が強すぎる主人公という印象が強いですが、こちらの主人公は対照的に、繊細でデリケートです。理不尽で、辛いシーンも多いのですが、見終えた後、不思議なふんわりとした余韻を楽しめました。今回はそんな「奇蹟がくれた数式」の紹介です。
数学の天才が、自らの直感と信仰に従い、数式の力で世界に挑む――映画『奇跡がくれた数式(The Man Who Knew Infinity)』は、実在する数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの波乱に満ちた人生を描いた感動的な作品です。数学というテーマに加え、異文化での葛藤や友情を描いたこの映画は、数学好きの一般人にも深い共感を与えてくれます。
1. 概要
『奇跡がくれた数式』は、数学史に名を残す天才ラマヌジャンと、彼を見いだしたイギリスの数学者ハーディの実話を基にしたドラマ映画です。数学の美しさだけでなく、文化の違いや孤独、信仰と友情など、さまざまなテーマが描かれています。
2. 出演する数学者
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シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(演:デーヴ・パテール)
- インド出身の天才数学者。独学で膨大な数式を生み出し、イギリスの数学者ハーディに見いだされる。神の啓示から公式を得たと信じ、自らの才能を証明するため奮闘する。
- 演じているデーヴ・パテール(Dev Patel)は、2008年に数々の賞を受賞した映画『スラムドッグ・ミリオネア』でも主演を演じています。
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ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ(演:ジェレミー・アイアンズ)
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- ハーディの同僚で、ラマヌジャンの才能を認め、彼を支援する数学者。
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ベルトラミ教授(演:スティーヴン・フライ)
3. あらすじ
映画は、1910年代のインド・マドラスから始まります。生まれ育った町で数学に没頭していたラマヌジャンは、その類まれな才能を証明するため、手紙に自らの公式を書き連ね、ケンブリッジ大学の数学者ハーディに送ります。
ハーディは、彼の手紙を疑いつつも「この数式は詐欺師には書けない」と確信し、ラマヌジャンをイギリスに招待します。ラマヌジャンは家族や信仰の地インドを離れ、見知らぬ土地で自らの才能を証明しようと奮闘しますが、異文化の壁、証明を求められるプレッシャー、そして孤独が彼を苦しめます。
ラマヌジャンとハーディは衝突しながらも、お互いに影響を与え合い、数学の世界に「無限の可能性」をもたらしていきます。物語は、二人の間に育まれた友情とラマヌジャンの苦悩、そして奇跡のような数式の発見を中心に展開します。
4. 見どころ
◇ 数学と友情の物語
この映画は、単なる数学の公式を超えて、異文化の葛藤と二人の友情を描いた人間ドラマです。合理主義者のハーディと、神の啓示を信じるラマヌジャンという対照的な人物の交流が、物語に深みを与えます。
◇ 有名な「1729」のエピソード
映画の中では、ラマヌジャンの直感力を象徴する「1729」というエピソードが紹介されます。病床のラマヌジャンが、タクシーの番号1729について、「2通りの立方数の和で表せる最小の数」と即答する場面は、彼の天才性を端的に表しています。
◇ 数式の美しさとひらめき
数学を扱う映画ながら、複雑な理論の説明は最小限に抑えられ、数式の美しさや発見の感動が視覚的に表現されています。ラマヌジャンの公式は「神の言葉」とも言える存在であり、それを信じて突き進む彼の姿が、観る者に強い印象を与えます。
◇ 異文化と孤独の葛藤
異国の地で孤独に苛まれるラマヌジャンの心情は、多くの人に共感を呼びます。慣れない環境や差別的な視線の中で、彼が自分を信じ続ける姿は、人間の強さと脆さを映し出しています。
個人的には、ハーディの次のセリフに心うたれました。
我々は絶対的完璧さを求める
無限の探究者にすぎない公式は創るものではなく
既に存在し…ラマヌジャンのような
類まれなる知性が
発見し証明するのを待っている
また、ラストのナレーションにも。
1976年ラマヌジャン最期の研究を記したノートが見つかった。
ベートーヴェンの"第10番"の発見と同じ重要性を持つ。
1世紀後 ラマヌジャンの公式は、
ブラックホールの研究に役立っている。
『奇跡がくれた数式』は、数学に興味を持つ人々にとって、ラマヌジャンという数学者の人生と業績に触れられる貴重な作品です。この映画の魅力は数学の専門性だけではなく、友情や信念、文化を超えた人間ドラマにもあります。
ラマヌジャンの公式が、今もなお数学の研究に応用されているように、彼の生き方もまた、自分を信じ、困難に立ち向かうことの大切さを教えてくれます。この時代のイギリスとインドは決して良好な関係ではなかっただけに、そのような背景がありながらも、同じ数学を愛する者同士で協力し理解しあう姿は、数学がもつ魅力を間接的に描画していると感じました。
皆様も、ご興味があったら、ぜひ!