推し(ガロア)の研究(ガロア理論)を何とか理解したい、という気持ちのもと誕生した記事の2回目です。前回はガロア理論の根本の考え方を、身近なたとえを使ってご紹介しました。今回は実際に、数字をあてはめて方程式を解いてみましょう…!
実際に数字の世界でガロア理論の入り口を開く
ガロア理論の「対称性」を、具体的な数値を使ってみていきましょう。ここでは、シンプルな例として「2次方程式」と「解の入れ替え」を使って、ガロアの考え方をなぞります。
1. 例:2次方程式と対称性
2次方程式を考えます。例えば、次のような式があります。
この方程式を解くと、次のようになります。
ここで、解は と の2つです。
2. 解の対称性とは?
ガロア理論では、これらの解の間の「入れ替え方(対称性)」を研究します。ここでは、解である と を入れ替える操作を考えます。
- 対称性の例:
- と を入れ替えると、数の順序は変わりますが、方程式の形()は変わりません。つまり、方程式の解の性質はそのまま保たれます。
- 逆に、入れ替えない場合も考えられます。これは「何もしない」という操作です。
このように、「解の入れ替え(操作)」が方程式の形を変えないという性質を持っているとき、その操作が方程式の対称性を示しているといいます。
3. 操作を「群」として扱う
ガロア理論では、このような解の入れ替え方を「群」という数学的な概念で整理します。この「群」というのは、複数の操作(入れ替え)をまとめて扱うルールのようなものです。
- 具体的には、次の2つの操作が考えられます:
- 解 と を入れ替える操作
- 何もしない操作(解をそのままにする)
これらの操作は「対称性を保つ」ものとして、ガロア理論の中で「ガロア群」と呼ばれます。この例の場合、ガロア群は2つの操作を持つ単純な構造になります。
4. もう少し複雑な例:3次方程式
次に、もう少し複雑な3次方程式を考えてみます。
この方程式の解は、次の3つになります(実数だけでなく複素数も含む):
ここで、解である 、、 をどう入れ替えられるかを考えます。
- 例えば、 を に、 を に、 を に入れ替えるような操作が可能です。
- これらの入れ替えをすべて考えると、3つの解の入れ替え方は全部で6通りあります。
これらの入れ替え方(対称性)をすべてまとめたものが、この方程式に対応する「ガロア群」です。ガロア理論では、これらの入れ替えの性質を調べることで、方程式が代数的に解けるかどうかを判断します。
5. ガロア群の重要性
ガロア理論のすごいところは、この「ガロア群」の構造を見ることで、方程式の難しさや解の存在について詳しい情報が得られる点です。
- もし、ガロア群がある特定の形をしていれば、方程式の解が簡単に見つかることがわかります(これが「代数的に解ける」ということです)。
- 一方で、ガロア群が複雑な形をしていると、その方程式を一般的な方法で解くのは難しいということがわかります。
なお、「代数的に解ける」とは、方程式の解を「四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)」と「べき根(平方根、立方根など)」だけを使って表現できることを指しています。
6. まとめ:ガロアの対称性と方程式の解
ガロア理論では、方程式の解を「ダンサー」として、彼らの踊る場所(解の値)をどう入れ替えるか、その入れ替え方のルール(対称性)を研究します。そして、その対称性を「ガロア群」という数学的な構造として扱います。
ガロア理論とはどのようなものなのか、その考え方の一端が伝わったなら幸いです。ガロア理論は、数の世界に隠れたルールを見つけ出す方法で、それが現代数学においても多くの分野に応用されています。
ガロア理論が難しいと感じられる理由のひとつに、理論内で定義される用語が多いことがあると思います。そこで、次回では、ガロア理論で使われている独自の用語についておさらいする予定です!