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多くの学問でβの位置につく万能選手、エラトステネス

エラトステネスをご存知ですか?古代ギリシャ時代にさまざまな分野の学問において業績を残した人物です。数学では特に「エラトステネスの篩」という手法で名前が知られています。今回はそんなエラトステネスについて紹介します!

古代ギリシャの学者のイメージ

エラトステネス(紀元前276年頃 - 紀元前194年頃)は、古代ギリシャの数学者、天文学者、地理学者、詩人、哲学者であり、その多才な業績から「ペンタテスロン(五種競技の選手)」と称されることもあります。彼は、多くの分野で重要な貢献を残しましたが、特に地球の円周の測定やエラトステネスの篩(ふるい)で知られています。

 

エラトステネスの人物像

エラトステネスは紀元前276年頃、現在のリビアにあるキュレネという町で生まれました。キレナは当時、ギリシャの文化が栄えていた都市であり、多くの知識人が集まる場所でした。

彼の生涯や人柄に関する具体的な逸話は多く残っていませんが、いくつかの情報や推測から、彼の人柄や数学に関わるようになった背景についてある程度理解することができます。

エラトステネスは若い頃から優れた教育を受けたと考えられており、アテネで学びました。アテネでは、哲学や数学、天文学など、幅広い分野の学問に触れることができたと考えられています。

 

エラトステネスにまつわるエピソードの一つに、彼が「ベータ」と呼ばれていたというものがあります。「ベータ」はギリシャ語で「第二」を意味し、これはエラトステネスがあらゆる分野で優れていたものの、「第一」ではなかったとからかわれたことに由来します。しかし、これはむしろ彼が多方面での優れた知識を持っていたことを示しており、一分野に特化せず、広範な学問を追求する姿勢を示しています。

 

エラトステネスの篩(ふるい)

素数の研究といえば、著作『原論(Elements)』の中で、素数に関する重要な定理を記述したユークリッドが有名です。ユークリッドは『原論』の中で、素数が無限に存在することを証明しました。彼は背理法を用いて、もし素数が有限個しか存在しないと仮定すると矛盾が生じることを示しました。これは数学史上最も有名な定理の一つであり、素数研究の基礎を築きました。

 

エラトステネスはユークリッドの研究の基礎を踏まえ「エラトステネスの篩」という素数を見つけるための効率的な方法を考案しました。この方法は、自然数のリストから素数の倍数を順次除去していくもので、素数の列を作成するための古典的かつ基本的なアルゴリズムです。エラトステネスの篩は、現代の素数発見アルゴリズムの基礎にもなっています。

エラトステネスのさまざまな功績

1. 地球の円周の測定

エラトステネスの最も有名な業績は、地球の円周を非常に正確に計測したことです。彼は、エジプトのアスワン(当時のシエネ)とアレクサンドリアの間の距離と、夏至の日にそれぞれの場所で太陽がどの角度で差し込むかを測定しました。そして、シエネでは太陽が真上に来ること(影ができないこと)、アレクサンドリアでは影ができることを利用して、地球が球体であるという前提のもと、円周を計算しました。彼の計測は、現代の値と比較して非常に正確でした。

2. 地理学

エラトステネスは、地理学の分野でも重要な貢献をしました。彼は、世界初の緯度と経度を使った地図を作成し、地理学を独立した学問分野として確立しました。また、彼は「地球」を意味する言葉「Geographia」を初めて使用したとされており、これが現代の地理学という言葉の由来となっています。

3. アレクサンドリア図書館の館長

エラトステネスは、アレクサンドリア図書館の館長も務めました。この図書館は当時の世界最大の知識の集積所であり、彼の知識や研究に大きく貢献しました。館長としての役割は、彼が多くの分野で知識を深め、他の学者との交流を通じて新しいアイデアを育む機会を提供しました。

4. その他の業績

エラトステネスは、地球の傾斜角や恒星の位置の測定など、天文学の分野でも貢献しました。さらに、彼は詩作や哲学にも造詣が深く、これらの分野でも作品を残しました。

篩の中に残った素数のイメージ

エラトステネスってこんな人
アレクサンドリア図書館(ムセイオン)の館長をつとめた
・数学だけでなく天文学、地理学、哲学、詩作など多分野で業績をあげた万能さからペンタテスロン(五種競技の選手)と呼ばれた
・各分野で1番ではなく2番目(ベータ)にいた。1分野に固執しない好奇心の幅広さがあった
・地球が球体であると推定した
・地球の円周を正確に計算した

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アレクサンドリア図書館

 

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