数学コミック 「はじめアルゴリズム」
数学をテーマにした漫画「はじめアルゴリズム」を紹介します。作者は三原和人さん、モーニング(講談社)で出版されており、全10巻構成です。
整数論(素数)、代数学、幾何学…といった数学を構成する各ジャンルから、文系でも興味が持てそうなトピックを抽出し、難しい概念や公式などは使わずに、やさしい言葉で考え方を紹介しています。数学の魅力のおいしいとこどりで飾ったお子様ランチのような作品です。
■ 一言で表現すると…
キラキラした瞳の天才数学少年と一緒に数学的視点から世界を見つめるお話
■ どんなお話?
タイトルにある「はじめ」は主人公の男子小学生。ハジメは暇があれば自然現象を数学的モデルに落とし込もうと試行錯誤することを楽しむような、天才少年です。そんなハジメの持つ類まれな数学センスに心奪われた年老いた数学者が、ハジメの手を引いて、ハジメ一人で構築したガラパゴス的数学世界から、数学界の巨匠たちが築いてきた広大な数学世界へ連れ出します。
ハジメを取り巻く人々の多くもまた数学愛好者で、数学を極めるために切磋琢磨したり、数学の本質を問う哲学的思考にドはまりして引きこもったり、自分のセンスのなさに絶望して自暴自棄になったりと、数学中心に生きている変人不器用な人ばかり。彼らとの出会いを通じて、数学の裾の広さや深みを知り、人生の明暗を体験し、ハジメは数学者としても人間としても成長していくわけです。そしてハジメと邂逅した人もまた、変わっていく。
人間としては経験が浅く、どうしても半人前な「子ども」が主人公のお話では、登場人物の感情がぶつかりあってしまうような、読んでいて「ほろ苦い」「イタイ」と感じる展開がつきものですが、この漫画の世界はそうではありません。主人公のハジメは純粋な数学への好奇心・探求心で構成されていてるため、目に映る世界は極彩色ながら、その視点は彼のフィルターを通すことによる「なんで?」「どうして?」に変換され、悪意を持つ人々の毒気やトゲも無効化されてしまう。最終的に残るのは「やわらかさ」と「やさしさ」そんな展開に心なごみます。また、絵のタッチもやわらかさも、さわやかな風が吹く草原の中で清涼飲料水を飲んだ後のような読後感を与えてくれます。
なんなら登場人物のうち、「感情的」という意味でもっとも子供っぽいのは、ハジメの師匠先生を始めとする年配者だったりします。子供たちのサッパリ具合と大人たちの子供っぽさといった対比関係にクスっとしますが、それだけ長い時間を数学にささげてきた「執念」のようなものがあるんだ、と思うとベテラン数学者たちへの「こだわり」も共感できたりして深いなぁと感じます。
とても面白い漫画なのですが、既に完結されているので続きが読めないのは残念です。時々WEBコミックサービスなどで最初の方の巻を無料で読めるキャンペーンをしていたりします。ご興味があったら、探してみてください。(Amazonのkindle版で1巻の最初の方を試し読みできます)
■ 参考URL
こちらからはじめアルゴリズムの作者、三原和人さんのインタビューが見れます。 wired.jp
■ とりあげられているテーマ
はじめアルゴリズムに出てくる数学トピック(一例)
■ キーワード
- 天才少年
- 数学モデル化
- 青春
■ どんな人向け?
- 数学に興味を持ちたい人
- 数学の面白さを知りたい人
■ 心に残った科白
「美しいものを美しいと感じるこころの目
情緒とは「世界」と「自分」の間に渡された道のようなものだ(略)
数学はその表現に過ぎない
私やハジメにとってはたまたまそれが数学だった
それは絵や音楽なんであってもかまわない」
「楽しいのが正解!私はそう思うな」
「数学者たちが残し伝えてきた設計図がある。
それを学ぶのが数学を勉強するということだ。」
「(初めての町で迷子になった時、案内されそうになって)
言わないで!せっかく迷子になったんだから!
自分で帰り道探すのって冒険みたいで楽しいでしょ」
「僕が分けるから世界はこう(分かれて)見えている…?
だとすると、もともと世界は分かれてないんじゃないか?」
「世界を全部ふくめる視点はなんて呼べばいいんだろう?」
■ 推しキャラ
- ハジメ
- 内田
- ヒナちゃん